急成長のお菓子市場 拡大する市場競争

 

中国のお菓子市場は成長の真っ只中にある。そしてその市場は、世界のお菓子メーカーが注目し、しのぎを削りあう市場ともなっている。その市場の全体的な様子を見てみよう。

 

 中国におけるお菓子市場は急成長を続けている。

 中国では「休閑零食」と呼ばれるこの市場。2011年には市場規模が960億元に達し、さらに2016年には約1890億元という巨大市場へと成長を遂げることが予想されている。

 

中国における「休閑零食」市場の市場規模の伸び(単位:万元)

 

 この「休閑零食」は、国内で以下の8種類の分類がなされている。日本と異なるのは、そのうちの「2.果仁類製品」などの、日本ではあまり無いお菓子が含まれていることである。中国では「ひまわりの種」や「くるみ」といったものが、お菓子として食されており、スーパーなどでも非常に大きな売上げスペースを占めているためである。また同時に、日本でもあまり見られなくなった果物を砂糖漬けにしたお菓子なども、まだまだ幅広い年齢層からの人気を集めている。

 

中国休閑食品の類別

 1.穀物類製品(膨化、油炸、烘焙)

 2.果仁類制品
 3.薯類制品

 4.糖食類制品

 5.パイ類制品

 6.肉禽魚類制品

 7.ドライフルーツ類制品

 8.ドライベジタブル類制品

 

  ただ、近年は若者層を中心として生活の洋式化が進んでいるため、チョコレートやポテトチップス、クッキー、スナック菓子などがそのシェアの大部分を占めるようになっている。

 こうした、更なる拡大が見込まれる中国のお菓子市場だが、大型スーパーを見てみると、販売スペースの大部分を占めているのが外資系ブランドであることが見て取れる。

 この背景には、中国のお菓子、特にスナック菓子やチョコレートといった洋菓子分野においては、ようやく発展が始まった分野であり、国内系企業が育っていないのである。これら外資系企業は豊富な資金力を生かし、大型スーパーに置ける売り場の確保、メディアを使った広告戦略で、多くのシェアを獲得しているのである。

 

 

■安全性を求める子供お菓子市場

 さて、日本同様、お菓子を購入する消費者は幅広い世代にわたっている。そのなかで最大の市場と見られるのが子供市場である。特に「1人っ子政策」の影響は大きく、大都市の生活者で、親が仕事で不在にしており、祖父母が子供を見るような家庭の場合、子供がほしがったものをすぐに買い与えるケースが多い。

また、若い親は子供の健康に対して敏感になっている。もちろんお菓子による過度の糖分・脂分の摂取などももちろんだが、先の「毒ミルク事件」以降は、子供の口に入るものの衛生・安全面には非常に厳しい目でチェックしている。小学生の子供を持つ親に話を聞くと

  「買うときに、本当に与えていいかとちょっと悩む」

  「子供がほしがるから買うけれど、やっぱり不安。成分表とかチェックしちゃう」

  「選ぶのであれば、やはり有名企業の見知った商品」

などといった声が多く聞かれる。

 

 こうした環境下で、経済的に余裕のある消費者が選ぶのは「輸入品」である。

 中国では国内商品の品質は向上しているとはいえ、いまだ「輸入品=いいもの」という意識は衰えていない。特に安全面においては輸入食材に対して絶対的な信頼を置いているといえるだろう。

 日本貿易振興機構(JETRO)が公開している『中国華東地区主要7都市のライフスタイル調査』では、衣・食・住・娯楽・学習・介護にわたって、華東地区7都市の消費者生活実態を調査しているが、その「食」のパートにおいても杭州市の特徴的な過程のコメントとして「子供のお菓子は安心できる輸入食材」という一言が紹介されている。このことから見ても、子供のお菓子においては「健康」、「安全」といったキーワードが極めて高く評価されていることが見て取れ、かつ輸入お菓子にもそれが適用されていることが見て取れる。

 また、もう一つの大きな消費層となっているのがホワイトカラーだろう。こうした世代は日本同様に流行やファッション性に注目する世代である。こうした層では味などと同時に、見た目、食べている時のおしゃれ感なども考慮される。また、「洋風嗜好」が強いのもこの世代で、常に新しい商品を求めている消費者といえるだろう。

 ただ、中国のお菓子業界においては、明確に「大人のためのお菓子」というコンセプトを打ち出している企業はほとんど無い。オフィスで軽食をつまむのが日常的な中国では、こうしたオープンな場所で自分のおしゃれ感を示すお菓子のニーズというものも、今後拡大すると思われる。

 

 

■コンビによりスーパー

 では、中国の消費者はどこでお菓子を購入しているのだろうか? 

 この質問に対して、非常に多くの消費者が「スーパー」と回答した。日本では若者のコンビニ消費が進んでいるのだが、中国ではカルフールやウォルマート、またローカル系の華聯超市をはじめ、各都市地元展開のスーパーなどが購入場所となっている。

 その最大の理由はまず「安さ」。大型スーパーとコンビニを比べると、スーパーの方が若干(スナック菓子にして約2~3角程度)安い。これは、大型スーパーが大量納品を行うことで納入価格を抑え、その分価格を下げて販売しているのが大きい。また、わずかな金額差であるが、日常に購入するものだけあって、より安いものを選ぶというのが中国の消費習慣なのである。

 また、地方都市ではコンビニが極めて少ないという点も上げられる。上海や北京といった沿岸部大都市にはローカル系、日系のコンビニが多く展開しており、上海では日系同士の激しいシェア争いが展開されているが、地方ではいまだ「雑貨店」などがその役割を担っている。そのため、日本のようにコンビニでお菓子を買い込むという習慣は、現時点では薄く、これからに期待することになりそうだ。

 

■「価格勝負」のお菓子市場

 さて、中国の消費者がお菓子を選ぶポイントは色々あるが最大の決め手となるのが価格である。日本では「ハイエンド」を歌った商品もあるが、「気軽につまむ」ことが主体であるお菓子に「高いお金は投資しない」のが中国消費者のクセなのである。

 こうした「価格勝負」のお菓子市場で、比較的厳しい状況に立たされているのが日系である。

 すべてを国内調達、国内生産に切り替えればコストダウンを果たすことは可能だが、一部の企業では原料の一部を日本や海外からの輸入に頼っているケースも存在しているようだ。こうした場合、やはり生産コストが下げられないために価格をローカルや外資のように下げることが出来ずにいる。価格を下げるためには材料費以外の部分でのコストカットを行うことが求められ、本来中国市場開拓において極めて大きな意義を持つはずの宣伝・PRに予算を投下できないといった声もある。

 その結果は想像に難くない。前述のように、食品の安全性に対する不安という心理がベースにある中国消費者にとって、無名の企業、無名のブランドは手に取る対象からは除外される。その価格がほかよりも高ければなおさらだろう。

 

■日系企業に求められているもの

 では日系のお菓子ブランドに商機は無いのかというと、実はそうではない。日本のお菓子は中国の若者世代から非常に高い評価を得ているのである。その大きなポイントは「バリエーション」である。

 例えばポテトチップスである。訪日旅行者の中には「日本のコンビニやスーパーに並べられているポテトチップスの種類の多さに感動した」という声が多くある。

確かに日本では1つの商材に数多くのバリエーションを作ることが多い。特にお菓子などでは、その数が極めて豊富。ポテトチップスにおいては各社がそれぞれ異なる味を出し、さらにはローカル限定商品など、商品に幅を持たせている。

 中国においても、その種類は年々増えてきているものの、日本のそれと比べるとまだまだ少ない。商品開発はなされているものの、あくまでも「作りました」に近く、それによるキャンペーンや話題性などは、まだまだ遅れているのである。

 またパッケージデザインについても、日本国内のお菓子はきわめて高い評価を得ている。もともと中国のデザイン性に関しては、パッケージのみならず向上の余地が大きいのだが、日本の商品ごとのキャラクターや、コンテンツとのタイアップなど、若者世代をひきつける工夫が凝らされている。

 これは、日本のコンビニ文化によるものといえるだろう。「消費者が店に入って○秒が勝負」といわれる日本のコンビニ商戦では、いかにしてパッケージで消費者に訴えるかに重点が置かれ、その結果として多くの傑作デザインを生み出だされている。しかし、中国ではまだまだ「スーパーで考えながら買う」や「見ずに買う」という購入方法が主流であるため、まだまだお菓子における商品パッケージへの工夫は足りおらず、消費者も物足りなさを感じているようだ。

 

『China Brand News Vol.18』より転載